The King/キング(2019年)

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★

 

◆キーワード:

#最後に大どんでん返し

#聡明で理性的な人間=ヘンリー五世を通してみる人間の愚かさ

f:id:Samba:20191206131848p:plain



 

◆感想:

 聡明で理性的な人間=ヘンリー五世であっても、神でない以上、全てを見通すことはできない。

彼は身内から巧妙に騙され続ける。そして誤った判断を下し、それによって自国民と相手国民とを戦争に巻き込み、多く犠牲者を出す。

彼も自らが引き起こした戦争によって無二の親友を失う。

彼が騙されたことは、私も彼と共に知って、ショックを受けた。

しかし、彼が騙されたか騙されなかったかは、私の彼に対する評価に何の影響も与えなかった。私は、彼の親友(フォルフスタッフ)の立場から、あるいは戦争に動員される民衆の立場から、彼をみていた。

親友のフォルフスタッフは、王の戦争にまったく関心がなかった。戦争をなんども経験した彼は、戦争が愚かで意味のないことを見抜いていたからだ。それでも、友を助けるために同行し、みなが王を見捨てそうな危機的状況に陥ると、必勝の戦術を考案し、先頭に立ち、犠牲になる。彼は国のために命を捨てたのではなく、親友のために命を捨てた。だから彼の生き様は美しい。だけど、それによって戦争に巻き込まれた民衆(兵隊)はいたたまれない。

民衆は、戦争となると、その存在は無限に悲しい。決戦の直前、ヘンリー五世は士気を上げるために兵隊たちの前で演説する。その言葉のなんと空虚に響くこと。意味のない戦争に、意味をつけようとしても、武者震いしか起きない。

私は、悲しい民衆になりたくない。愚かな指導者の戦争に動員されて、無意味な犠牲を強いられたくない。

そうならないために歴史は、民主主義を作り上げた。

民主主義は完璧ではないし、むしろ欠点だらけだが、ヘンリー5世のような聡明な王が率いる王制よりもましなシステムだ。

 

◆こちらもどうぞ↓(私が購読している方の、全く違う立場からの映画評です)

organeziezd.hatenablog.com