ゴキブリは強い、賢い、しぶといな、追い払うのに、半日かかる。

2019年夏の自由研究:私のゴキブリ観察記

 

20198月の終わりの夜7時半ごろ、直径5センチほどのゴキブリが床を這っているのをみつけた。さっそく常備してあった「ヒバ油スプレー」をかけてみた。できれば、ゴキジェットプロなどのゴキブリ用のスプレーは室内で使いたくないのだ。

ゴキブリはヒバ油スプレーを嫌がって逃げた。

とにかく賢くて、スプレーが届かない、物陰によく隠れる。

 

すぐにネットで調べてみた。

ヒバ油スプレーは、「ゴキブリや虫を寄せ付けない」作用はあっても、「殺す」作用があるとは書いていない。殺したいわけではない。気絶させるか、弱らせるかして、新聞紙に優しく包んで、この部屋から出したい。

だけどヒバ油スプレーの効果は一時的で、510分くらいの時間が経つと、すぐに元気になる。

そこで、洗剤が必要だと思って、お風呂に入って「バスマジックリン」スプレーをもってきた。それをかけると、ごきぶりは天井と壁の間の壁紙が剥がれているスペースに入って、今にも落ちそうに弱っている(ようにみえた)。私は、動線の下に当たる机の上に、新聞紙を敷いて待ち構えた。しかし、いつまで経ってもゴキブリは落ちてこない。30分ほどすると、また元気に動き始めた。

そこで今度はもう少ししつこくバスマジックリンをスプレーしてみた。だけど同じパターンが繰り返されただけであった。

 

私は見張りと観察に疲れて、ベッドの上でうたた寝してしまった。

そして夜中の一時半、目が覚めた時、ゴキブリはそこにいなかった。探し回ると、向かいの壁に張り付いていた。また、元気になっていた。あれ~ 界面活性剤はイチコロのはずなのに、これもまた一時的な効果しかないのか、と驚いた。

今度はキッチンに行って、より濃厚な台所洗剤泡スプレーをもってきた。そして壁に張り付いているゴキブリに向かって勢いよく振りかけた。ゴキブリは賢く逃げた。スパイダーマンのように、天井に張り付いて、照明の陰でじっとしている。スプレーが届かない位置に入って、休み、体力を回復させているようだ。

 

夜中の2時半になった。

ゴキブリとの格闘は7時間にも及んでいた。ふと、見上げると、ゴキブリはもういなかった。回復したので、またどこかに行ってしまったのだ。ぬかった・・・

 

次の日の朝、11時ごろ、またもや、あのゴキブリが床を這っていた。それも元気に!

もう限界だった。私は観念して、ゴキブリホイホイを使うことにした。

イチコロだった・・・

 

ゴキブリは強い、賢い、しぶといな、追い払うのに、半日かかる。

 

 

열혈사제(熱血司祭)2019年2-3月放映,SBS

韓国傑作ドラマ批評(9):

 

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆感想:
主役は主役以上に、脇役にも主役級の活躍をさせる、ブラックユーモア満載のアクション活劇。何回リピートしても面白い。笑える。驚かされる。 
 
◆内容:
特殊部隊の任務遂行中の事件によって大きなトラウマを抱え、司祭へと転身した主人公のキム・ヘイル(キム・ナムギル)。傷ついた自分をカトリシズムの世界へと導いてくれた篤志家の恩師が、突然この世を去り、ヘイルのトラウマがぶりかえす。一方で、恩師が積み重ねてきた福祉活動が解体されるのを目の当たりにし、せめて目の前で苦しむ人を助けようと行動する過程で、恩師が自殺したのではなく、大きな権力によって殺されたことを確信するようになる。ヘイルは、その権力の罪を暴き、汚名を着せられた恩師の名誉を回復する孤独な戦いに挑む。最初は欠点だらけの一人の人間の孤独な戦いとして始まったが、最後には欠点だらけの複数の人間の連帯の戦いとなり、自分の欲のために他者を道具のように扱う輩を懲らしめて終わる。一滴の水が大河になる過程が、ユーモラスに、爽快に描かれる。
 
 
脚本は、パク・チェボム。「グッド・ドクター」や「キム課長」の脚本家。日本やハリウッドでリメイクオファーが来ている、売れっ子作家。
キャラクター一人一人を丁寧に個性的に、そして愛情を込めて描く姿勢に好感が持てる。
彼の一番すごいところは、セリフの面白さ。何回リピート視聴しても、笑えるところがたくさんある。まぁ、これは役者とのシナジーによる結果だろうけど。
 
役者といえば、アクションもこなせる実力派俳優のキム・ナムギルは、このドラマでコミカルな演技にも才能があることを証明した。アクションができて、演技力があって、ユーモア感覚もある美形俳優はそう多くない。彼はこのドラマの成功によって「ジャンルがキム・ナムギル」という褒め言葉をもらっている。
 
 
 
 

 

 

 
 

Aladdin (アラジン)ー2019年と1992年の言説比較ー

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆キーワード:

#女性のエンパワメント

#官僚のエンパワメント

 

◆内容と感想:
大筋の内容は1992年と同じだから省く。
歌と鍵となる台詞も、同じ。
これで、この作品の歌と台詞は、いい意味で古典化したなと思った。
それはそれですごいことなのだけど、もっとすごいのは、変化したディテール。
ダンスは操り人形のような動きが今っぽい。
 
ところで、私が特に着目したいのは個々人のセリフのなかに進歩的で鼓舞的なメッセージも含まれているところ。
 このディスニー映画を体験した世界中の子供達は、知らず知らずのうちに、ディズニーが「正」とする人間像や道徳意識を刷り込まれるはず。だからこそ、独りよがりの人間観や道徳意識が描かれていたら、世界中から反発があるだろう。ところがこれが支持される(=ヒットする)理由は、その人間観や道徳意識が、個々人のエンパワメントという時宜にかなった普遍的な潮流に一致しているからだ。
 
個々人のエンパワメントは、民主主義の根幹だ。
今や民主主義は名ばかりで、世界中で権威主義ポピュリズム排他主義が幅を利かせている。この映画は私たちにそれぞれが置かれてきた歴史的位置を省みさせてくれる。
 
■アニメ版では、ジャスミンのエンパワメントはただ「自分の意思で夫を選ぶ」ことまでであった。言うまでもなくそれがエンパワメントになった理由は、当時は自分の意思で夫を選ぶことさえ許されない女性の現状があったからである。しかし今回の実写版では、ジャスミンは「自分の意思でサルタン(王)になることを選ぶ」。女性であっても、自分の意思で政治に参加し、政治的なリーダーになりうることを、またそのような選択を可能にすべきことを、映画はジャスミンを通して呼びかける。四半世紀を経て、女性はやっとこの位置まで来た。感慨深い。女性の歴史的な座標軸をディズニー映画が示してきたことの影響力は計り知れないだろう。
 
■宮廷警備隊長のハキームに、ジャスミンが誰の命令を受けるのか、慣習ではなく自分の意志に従えと訴えたシーンはまるで光州事件天安門事件を制圧した警官や軍人たちに訴えかけているように聞こえる。今も、職責に従う義務があるという理由だけで、独裁者の命令を実行し民主的なデモを流血で抑え込んでいる世界中の公務員/官僚たちに、このセリフは問いかけているようだ。「あなたの人間としての良心、あなたの本当の使命はどこにあるのか」と。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 

屋根付きのオープンカーで駆け抜ける、風と光とこの瞬間よ。

今日の短歌(6) :

 

「屋根付きのオープンカー」とは、窓を全開した状態のただの中古車。

屋根があるので、直射日光を避けることができるのが、とてもいい。

紐付きのアウトドア用帽子をなびかせながら、初夏の田園を駆け抜けた。

目的地は、あまりにも現実味がありすぎるので、この際、省略。

目的が何であれ、今、この瞬間、こうやって梅雨の晴れ間の清々しい初夏の朝、風と光を一人で満喫できるのは、これまでもなかったし、これからもなさそうだ。

そう思うと、この瞬間が愛おしくかけがえのないものに思えた。

 

私は、車を持っていないし、持ちたいとも思わないし、何よりも持つ財力もない。

この先はジリ貧ロードまっしぐらのはずなので、今日のこの体験はほとんど奇跡なのだ。

 

 

 

그냥 사랑하는 사이 (ただ愛する仲),2017年,JTBC

韓国傑作ドラマ批評(8):

 

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆内容:
韓国語から直訳しただけの邦題「ただ愛する仲」がちょっとピンとこない。
私なら「ただ愛するだけの仲」にするな〜
このドラマ,2014年のセウォル号沈没事故のような大規模な人災(デパート崩壊事故)で生き残った二人が、同じ事故の被害者であることを知らずに出会い、それぞれのトラウマと向き合って折り合いをつけていく中で愛し合うようになる物語。
 
 
◆感想:
主人公の青年ガンドゥを演じるのは、2PMのジュノ。相手役の女性は、ロウトーンの声が魅力的なウォン・ジナ演じるムンス。二人の職業は、いわゆる「底辺」。ガンドゥはいわゆるドカタだし、ムンスは大学の建築科を卒業したものの、実家の銭湯を手伝う。二人はトラウマを抱えている分、心に壁がある。出会えば互いを傷つけ合わずにはいられない。思いがけず相手を傷つけてしまう中で、自分の傷とも向き合わざる得なくなり、二人は周囲の人や社会が抱える傷にも思いを馳せながら、成長していく。
 
主人公たちと一緒に、自分の傷も「癒される」暖かい個人的な物語であると同時に、人災を生むシステムを許容してきた個々人のマインドに反省を促す、主張しすぎない社会派ドラマ。
 
 

 

 

 
 

自分とは異なる他者を受け止める,すごい人だよ高橋さんは

今日の短歌(2) :

 

NHKラジオ第1の「すっぴん!」の金曜日担当パーソナリティー高橋源一郎さん。

毎日新聞の「人生相談」の回答者の一人でもある。

 

好きになったきっかけは,対人関係や感情面で「正しさ」の相対化を見事に実践しているから。理屈でわかっている人と,生活の中で実践する人とは雲泥の違い。

大学の先生が必ずしも立派でないのは,論理がいくら正しくても,感情面で自己中心的な人が多いから。

私は高橋源一郎の学問にはあまり関心がないけれど,彼が原則として他者の立場を肯定しようとしていることに,新鮮な驚きを禁じ得ない。高橋さんのように,男性で,モテて,立派な仕事があって,NHK毎日新聞が呼んでくれるほど社会的に評価されている人は,無意識に自分を「正しさ」のモデルとしがちなのに,反対の立場の人ー女性,モテない,仕事がない,誰からも評価されないーをむしろ肯定して応援している姿を見ると,とてつもなく懐の広い,ポストモダンな大人だな,と思う。

 

彼のような人がこの世に存在して発信してくれるだけでも,力になる。色々な困難を乗り切って,人を応援する立場になってくれて,本当にありがとう,高橋さん。

 

 自分とは異なる他者を受け止める,すごい人だよ高橋さんは

韓国傑作ドラマ批評(7):으라차차 와이키키 2 (ウラチャチャ・ワイキキ 2),2019年,KBS

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★

 

◆内容:
ゲストハウス「ワイキキ」の合同オーナーとなった3人の若者が繰り広げる,抱腹絶倒のシットコム。 それぞれまだ付き合ってはいないが,ウマが合う女友達がいる。彼らと彼女らがどうやって恋仲になっていくのか,それともならないのかも一つの見所。
 
◆感想:
ゲストハウスとは名ばかりで,実態は自分たちのシェアハウスのようなもの。お金は外で稼ぐ。主役の一人,イ・イギョンは,しがない脇役俳優。たくさんパロディーをするので,彼が出るととにかく面白い。何も考えず大笑いできる,気難しい私にしては珍しくお気に入りの作品。