사랑의 불시착(愛の不時着),2019年12月〜2020年2月,TVN/Netflix

韓国傑作ドラマ批評(10)
◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

f:id:Samba:20200222234621p:plain

愛の不時着

f:id:Samba:20200222234648p:plain

사랑의 불시착


◆見どころ:
普通のラブコメで終わらない、北朝鮮に不時着した韓国人ビジネスウーマンと、北朝鮮のエリート士官とが繰り広げる命賭けのロマンス。
 
主演男優、#ヒョン・ビンの独特の低く響く声、繊細な表情と美貌、軍服が映えるように鍛え抜かれた長身と、そこから繰り出される本格アクションに魅せられること間違いなし!
主演女優、#ソン・イェジンのコミカルさと抒情性を兼ね備えた迫真の演技に脱帽!
  
◆オススメの理由ー進取の現代性と方法としての政治性:
 
・この壮大なラブコメ/ロマンスドラマの「現代性」は、男女の恋愛を描くことを「目的」としているのではなく、それを一つの「結果」として描いているところ。では、目的は何かと言うと、人間愛を描くこと。彼らの愛は、「利己」から程遠い。「利他」を突き詰めて、突き詰めて、最後に到着したのが、主人公カップルの場合「結婚」ではなく、1年に2週間だけ外国で会うという関係。そして準主人公カップルの場合、相手のために犠牲になって一人(男性)が死に、もう一人(女性)は一生独身で、堂々と人生を謳歌する。結婚がゴールインでないところ、多様な価値観をみせるところがなんと現代的なこと!
 
・『パラサイト』のポン・ジュノの監督が「社会」的メッセージを伝えようとして映画を作ったのではなく、ただ人間を描こうとした結果、人々に現代社会を批判的に省みさせる契機を作ったように、このドラマのライターも究極の「利他」を描こうとした結果、命がけにならざるをえない南北関係を利用したのだろう。それでも、これを見た人は、南北出身の主人公が結ばれるように、南北朝鮮(韓国)も統一すればいいのにという感情を抱くだろう。このドラマが北朝鮮で地下でみられるようになれば、爆発的な政治効果をもつだろう。民主化した韓国は北朝鮮を批判せずに抱擁するドラマを作れるが、独裁国家北朝鮮はそれができない。ソフトパワーが重要な影響力をもつ昨今、韓国が有している進取のエンタメ力が北朝鮮社会にとてつもない心理的ボディブローを与えるだろうことを、一視聴者として今日、予想しておく。
 
◆内容:
この際、今日の時点では、書きたいことは書いたので省きます。
 
 

기생충/Parasite (パラサイト: 半地下の家族)2019年

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆キーワード:

#左右(イデオロギー)ではなく、上下(貧富)の人間関係がもたらす喜劇と悲劇

#圧巻のビジュアルと結末


f:id:Samba:20191124171500p:plain

映画:パラサイト(2019年)

 
◆感想(2019年11月):

英語でなんて言う?(2):「決めつけないで!」pigeonhole

Keyword(s): pigeonhole

 

世の中が「複雑」になった反動で、都合の良い事実だけを集めて提示する「単純」さが、もてはやされています。

 

それが、一つのものの見方にすぎないことを発信者および受信者がよく理解していれば問題ないのですが、「一事が万事」として、声の大きい方のものの見方に全ての関係者(事象)がブラックホールの如く吸い込まれてしまう世の中です。

 

そういった状態に異議を唱える時、使いやすいのが、動詞pigeonhole(字面通りの名詞的意味は、鳩の小屋出入り穴)です。

 

バイリンガルの韓国ヒップホップ歌手Tabloがpodcastで使っていました。

 

They try to pigeonhole K-pop and the Korean music industry as this super factory-like corporate machine.

Kポップと韓国音楽業界は、ひどく工場的な、企業的な、マシーンと決めてつけられている。

 

 

Twittersphere(ツイッター界隈)では、「ネトウヨ」、「ブサヨ」、「在日」認定がいまもはびこっています。

 

それに異議を申し立てる時も、便利です。

 

I am tired of being pigeonholed as a Netouyo/Busayo/Zainichi.

 

 

Call me by your name(君の名前で僕を呼んで)2017年

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★

 

◆キーワード:

#恋に性別は関係ない

#人の精神と身体は、ありのまま、尊重されるべき

 
◆内容と感想:多国籍な背景をもつユダヤ人インテリの父母の下で音楽と語学に興味と才能をもつ美しい少年が、父親に招待されてやってきた大学院生の青年と南イタリアでのバカンスを共に過ごす。少年は、その青年に恋をした。その心を、青年も父母もとても大事に受け止めた。夏が終わる頃、青年は地元に戻って、女性と結婚した。父と母は、失恋した少年の心を慰める。どんな恋も可能だと言いながら。
 
バイセクシュアルなのは、とても自然なことだ。人が人に惹かれるのに、男も女もないんじゃないかなと、ずっと思ってきた。この映画を見て、そのことを確信するようになった。大人たちが少年のセクシュアルな目覚めをとても大事にしているところに感動を覚えた。こんなに思いやりがある大人たちに囲まれて育った少年は、きっと心がすごく広くて暖かくて、セクシーな大人になるんだろうな・・・
 
 

Spiderman: Far from Home (スパイダーマン:ファーフロムホーム)2019年

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★

 

◆キーワード:

#人間は多様だから面白い

#人間は弱いからかっこいい

 
◆内容と感想:
ハリウッドの映画が世界中の人々を惹きつける限り、アメリカにはまだまだ魅力があると思った。
科学技術の最先端を想像力豊かに見せてくれるだけでなく(大量の殺人ドローンを使った3Dプロジェクション)、
人間関係のあり方の最先端も面白おかしく教えてくれる。
 
私は特に、人間関係の方に惹きつけられた。
この2019年に公開されたヒーロー映画には、容姿・能力・性格の完璧な人間は登場しないし、人種の特徴もステレオタイプを廃し、相対主義の立場に立っている。世の中に完璧な人はいないという事実が共有されて久しい。みんな、何かしらの弱さがあって、人物にリアリティーが出る。そういう時代なんだと思った。
 
◆登場人物:
・賢くていい人になりたいと思っているけれど、まだ子供で、自分に自信がない主人公
・権威的でない、オタクっぽい、二人の先生(白人と黒人)
・浅黒い肌の、主人公より背が高い、ガールクラッシュ(いつもむっつりしているけれど、笑うと可愛い)なガールフレンド。
・肥満体のアジア系だけど、意外にモテる親友。
・伝統的な美男(白人・カッコいい・背が高い)だけど、自己中で、ガールフレンドから振られるダサいライバル。
・自分がヒーローになるためになら、他人がどうなってもよい普通の人が悪役。