기생충/Parasite (パラサイト: 半地下の家族)2019年

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆キーワード:

#左右(イデオロギー)ではなく、上下(貧富)の人間関係がもたらす喜劇と悲劇

#圧巻のビジュアルと結末


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映画:パラサイト(2019年)

 
◆感想(2019年11月):

Call me by your name(君の名前で僕を呼んで)2017年

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★

 

◆キーワード:

#恋に性別は関係ない

#人の精神と身体は、ありのまま、尊重されるべき

 
◆内容と感想:多国籍な背景をもつユダヤ人インテリの父母の下で音楽と語学に興味と才能をもつ美しい少年が、父親に招待されてやってきた大学院生の青年と南イタリアでのバカンスを共に過ごす。少年は、その青年に恋をした。その心を、青年も父母もとても大事に受け止めた。夏が終わる頃、青年は地元に戻って、女性と結婚した。父と母は、失恋した少年の心を慰める。どんな恋も可能だと言いながら。
 
バイセクシュアルなのは、とても自然なことだ。人が人に惹かれるのに、男も女もないんじゃないかなと、ずっと思ってきた。この映画を見て、そのことを確信するようになった。大人たちが少年のセクシュアルな目覚めをとても大事にしているところに感動を覚えた。こんなに思いやりがある大人たちに囲まれて育った少年は、きっと心がすごく広くて暖かくて、セクシーな大人になるんだろうな・・・
 
 

Spiderman: Far from Home (スパイダーマン:ファーフロムホーム)2019年

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★

 

◆キーワード:

#人間は多様だから面白い

#人間は弱いからかっこいい

 
◆内容と感想:
ハリウッドの映画が世界中の人々を惹きつける限り、アメリカにはまだまだ魅力があると思った。
科学技術の最先端を想像力豊かに見せてくれるだけでなく(大量の殺人ドローンを使った3Dプロジェクション)、
人間関係のあり方の最先端も面白おかしく教えてくれる。
 
私は特に、人間関係の方に惹きつけられた。
この2019年に公開されたヒーロー映画には、容姿・能力・性格の完璧な人間は登場しないし、人種の特徴もステレオタイプを廃し、相対主義の立場に立っている。世の中に完璧な人はいないという事実が共有されて久しい。みんな、何かしらの弱さがあって、人物にリアリティーが出る。そういう時代なんだと思った。
 
◆登場人物:
・賢くていい人になりたいと思っているけれど、まだ子供で、自分に自信がない主人公
・権威的でない、オタクっぽい、二人の先生(白人と黒人)
・浅黒い肌の、主人公より背が高い、ガールクラッシュ(いつもむっつりしているけれど、笑うと可愛い)なガールフレンド。
・肥満体のアジア系だけど、意外にモテる親友。
・伝統的な美男(白人・カッコいい・背が高い)だけど、自己中で、ガールフレンドから振られるダサいライバル。
・自分がヒーローになるためになら、他人がどうなってもよい普通の人が悪役。
 
 

열혈사제(熱血司祭)2019年2-3月放映,SBS

韓国傑作ドラマ批評(9):

 

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆感想:
主役は主役以上に、脇役にも主役級の活躍をさせる、ブラックユーモア満載のアクション活劇。何回リピートしても面白い。笑える。驚かされる。 
 
◆内容:
特殊部隊の任務遂行中の事件によって大きなトラウマを抱え、司祭へと転身した主人公のキム・ヘイル(キム・ナムギル)。傷ついた自分をカトリシズムの世界へと導いてくれた篤志家の恩師が、突然この世を去り、ヘイルのトラウマがぶりかえす。一方で、恩師が積み重ねてきた福祉活動が解体されるのを目の当たりにし、せめて目の前で苦しむ人を助けようと行動する過程で、恩師が自殺したのではなく、大きな権力によって殺されたことを確信するようになる。ヘイルは、その権力の罪を暴き、汚名を着せられた恩師の名誉を回復する孤独な戦いに挑む。最初は欠点だらけの一人の人間の孤独な戦いとして始まったが、最後には欠点だらけの複数の人間の連帯の戦いとなり、自分の欲のために他者を道具のように扱う輩を懲らしめて終わる。一滴の水が大河になる過程が、ユーモラスに、爽快に描かれる。
 
 
脚本は、パク・チェボム。「グッド・ドクター」や「キム課長」の脚本家。日本やハリウッドでリメイクオファーが来ている、売れっ子作家。
キャラクター一人一人を丁寧に個性的に、そして愛情を込めて描く姿勢に好感が持てる。
彼の一番すごいところは、セリフの面白さ。何回リピート視聴しても、笑えるところがたくさんある。まぁ、これは役者とのシナジーによる結果だろうけど。
 
役者といえば、アクションもこなせる実力派俳優のキム・ナムギルは、このドラマでコミカルな演技にも才能があることを証明した。アクションができて、演技力があって、ユーモア感覚もある美形俳優はそう多くない。彼はこのドラマの成功によって「ジャンルがキム・ナムギル」という褒め言葉をもらっている。
 
 
 
 

 

 

 
 

Aladdin (アラジン)ー2019年と1992年の言説比較ー

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆キーワード:

#女性のエンパワメント

#官僚のエンパワメント

 

◆内容と感想:
大筋の内容は1992年と同じだから省く。
歌と鍵となる台詞も、同じ。
これで、この作品の歌と台詞は、いい意味で古典化したなと思った。
それはそれですごいことなのだけど、もっとすごいのは、変化したディテール。
ダンスは操り人形のような動きが今っぽい。
 
ところで、私が特に着目したいのは個々人のセリフのなかに進歩的で鼓舞的なメッセージも含まれているところ。
 このディスニー映画を体験した世界中の子供達は、知らず知らずのうちに、ディズニーが「正」とする人間像や道徳意識を刷り込まれるはず。だからこそ、独りよがりの人間観や道徳意識が描かれていたら、世界中から反発があるだろう。ところがこれが支持される(=ヒットする)理由は、その人間観や道徳意識が、個々人のエンパワメントという時宜にかなった普遍的な潮流に一致しているからだ。
 
個々人のエンパワメントは、民主主義の根幹だ。
今や民主主義は名ばかりで、世界中で権威主義ポピュリズム排他主義が幅を利かせている。この映画は私たちにそれぞれが置かれてきた歴史的位置を省みさせてくれる。
 
■アニメ版では、ジャスミンのエンパワメントはただ「自分の意思で夫を選ぶ」ことまでであった。言うまでもなくそれがエンパワメントになった理由は、当時は自分の意思で夫を選ぶことさえ許されない女性の現状があったからである。しかし今回の実写版では、ジャスミンは「自分の意思でサルタン(王)になることを選ぶ」。女性であっても、自分の意思で政治に参加し、政治的なリーダーになりうることを、またそのような選択を可能にすべきことを、映画はジャスミンを通して呼びかける。四半世紀を経て、女性はやっとこの位置まで来た。感慨深い。女性の歴史的な座標軸をディズニー映画が示してきたことの影響力は計り知れないだろう。
 
■宮廷警備隊長のハキームに、ジャスミンが誰の命令を受けるのか、慣習ではなく自分の意志に従えと訴えたシーンはまるで光州事件天安門事件を制圧した警官や軍人たちに訴えかけているように聞こえる。今も、職責に従う義務があるという理由だけで、独裁者の命令を実行し民主的なデモを流血で抑え込んでいる世界中の公務員/官僚たちに、このセリフは問いかけているようだ。「あなたの人間としての良心、あなたの本当の使命はどこにあるのか」と。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 

그냥 사랑하는 사이 (ただ愛する仲),2017年,JTBC

韓国傑作ドラマ批評(8):

 

 ◆オススメ度(★〜★★★★★):★★★★★

 

◆内容:
韓国語から直訳しただけの邦題「ただ愛する仲」がちょっとピンとこない。
私なら「ただ愛するだけの仲」にするな〜
このドラマ,2014年のセウォル号沈没事故のような大規模な人災(デパート崩壊事故)で生き残った二人が、同じ事故の被害者であることを知らずに出会い、それぞれのトラウマと向き合って折り合いをつけていく中で愛し合うようになる物語。
 
 
◆感想:
主人公の青年ガンドゥを演じるのは、2PMのジュノ。相手役の女性は、ロウトーンの声が魅力的なウォン・ジナ演じるムンス。二人の職業は、いわゆる「底辺」。ガンドゥはいわゆるドカタだし、ムンスは大学の建築科を卒業したものの、実家の銭湯を手伝う。二人はトラウマを抱えている分、心に壁がある。出会えば互いを傷つけ合わずにはいられない。思いがけず相手を傷つけてしまう中で、自分の傷とも向き合わざる得なくなり、二人は周囲の人や社会が抱える傷にも思いを馳せながら、成長していく。
 
主人公たちと一緒に、自分の傷も「癒される」暖かい個人的な物語であると同時に、人災を生むシステムを許容してきた個々人のマインドに反省を促す、主張しすぎない社会派ドラマ。